ロジカルかつエモーショナルに、
いまできる最善を紡ぎ出す

Art Director
Daiki Nawa / 名和 大気
PROJECT

Client

カシワバラ・コーポレーション

Delivered

リサーチ/分析、コンセプトメイキング、情報設計、UIデザイン、アートディレクション、ビジュアルデザイン、フロントエンド開発、プロジェクトマネジメント

Summary

人々の住まいや暮らしに関わるサービスを、総合的に提供するカシワバラグループ。CI(コーポレートアイデンティティ)の見直しを機に「グループ企業13社すべてのWebサイトを刷新したい」という依頼があり、フォーデジットはいくつかの提案をした。新しいスローガンに合わせ、各社の事業をアイコニックに表現したビジュアルの策定と、統一感あるサイトをつくるためのデザインシステムの導入だ。

Team

職種の垣根を越えて
信頼できるものづくりを

チームは、明確な縦割り体制ではない。それぞれに「ディレクター」「デザイナー」といった役割はあるけれど、情報のリサーチやインプット、アイディア出しなどは、職種の垣根を越えて取り組む。その複合的観点をもって、デザインコンセプトからアウトプットの品質を考えるのが、アートディレクターである名和の役割だ。

関わる人材…クリエイティブディレクター、アートディレクター、ディレクター、デザイナー、デベロッパー、プロデューサー

案件の背景を踏まえて
最適な提案を考える

コーポレートサイトのリニューアルとは、見た目だけを新しく変えることではない。会社の在り方を考え直し、あらためて正しく伝えることだ。カシワバラが擁するグループ企業サイトの刷新も、そうした意識に基づいて進められた。
「クライアントはサイトリニューアルに先がけて、CIを刷新していました。コーポレートスローガンやインナーメッセージが固まったところから、Webに関してご相談を受けたのが僕たちです。そもそもどんなサイトであるべきか、決まったばかりのメッセージをどうやってWebのコミュニケーションに落とし込んでいくかを考えていきました」。
13社のサイトすべてに手を入れるのは、予算の関係上なかなか難しい。そこでフォーデジットは、まず3サイトのリデザインを提案する。「もちろん『残り9サイトのことは適当にお願いします』という話ではありません。まずは当社が、カシワバラのブランドを反映した、グループ企業サイト共通のデザインシステムをしっかりと構築。クライアントはそのデザインシステムに定義されたモジュールを組み合わせることで、統一感のあるサイトがつくれるようになるのです。最初に着手する3サイトは、デザインシステムをどう使うか見せるサンプルのような役割でした」。
予算や納期、グローバルカンパニーになるためにそろえるべきグループの足並み――そうした背景を踏まえると、デザインシステムが最もいい手段だったのだと、名和は言う。

はじめての挑戦も手間もいとわず、
価値ある仕組みを築く

デザインシステムを採用することは、フォーデジットにとっても新たな挑戦だった。軌道に乗せるための作業は決して少なくないけれど、クライアントにもフォーデジットにも、それだけの価値がある。「クライアントの規模が大きくなればなるほど、Webリニューアル一つとっても、関わる人数が多くなっていきます。そこにデザインシステムのようなガイドラインがあれば、各人の判断に左右されず統一した世界観をつくることができる。Webの運用が社内で完結するため、コストメリットもあるし、スピード感も生まれるんです。僕らにとっても、汎用的なモジュールをかっちりと作り込んで提案できるチームになれれば、強みになると感じました」。
とはいえ、デザインシステムを構築するために、モジュールを作りきるのは手間がかかった。配色からレイアウト、タイポグラフィ、マージン、ボタン……あらゆる要素を洗い出し、検討していく。「ディレクターとデザイナーが、それぞれの視点から意見を出し合いました。もっと小さいパーツまでつくることもできるけれど、運用性を考えれば、パーツを増やすことが得策とは限らない。クライアントが使いやすいように、耐久性の高いモジュールを必要なぶんだけ制作していったんです」。

初恋のように感じられるほど
制作にのめりこむ

もうひとつ必要だったのは、新しいコーポレートメッセージを伝えていくためのキービジュアルだ。当初の依頼にはなかった内容だが、リニューアルにあたって必要性を感じ、自ら提案した。
「CI/VIを変えるという大きな機会に、出来合いの画像素材を使うだけでは、社長の心意気が伝わっていかないと感じたんです。社長と直にお会いして、会社の方向性などをうかがう時間がいただけたのも大きかったですね。『グローバル企業であること』『イノベーションカンパニーであること』を伝えたいという要望に応えるため、メッセージを強く表現しながら、グループ企業13社で共通して使えるようなビジュアルをつくろうと思いました。国内外でクライアントに似たグループ構造のWebサイトをたくさん分析しながら、アイディアを練っていったんです」。
グローバル企業の分析から得た発見は、Webサイト全体感としての“普通さ”だった。安定感のあるデザインに、ほんのひとさじの“らしさ”。あまりにオーソドックスで、一見つまらなく見えるかもしれない。でも、その“普通さ”に強い意味を込めたキービジュアルとのバランスが、いま目指すべきゴールなのだと思う。かつ、キービジュアルと親和性を持ち、各サイトで使えるモチーフも、あわせて考えた。
「ロジックからは、一定のデザインしか生まれてきません。その先の感覚的なことまでたどり着くために、ありとあらゆる本を読み、分野外も含めていろんなアウトプットを見ました。寝ても覚めてもこの案件のことばかり考えていたから……僕にとってはなんだか、初恋のようなクリエイティブなんですよね」と、照れくさそうな名和。
納品後、Webサイトのために作成したキービジュアルをステートメントビジュアルにも使いたいと言われたときは、恋が実ったような心地にもなった。そうして生まれたデザインたちが、いま静かな存在感を放ち、カシワバラグループのサイト全体を支えている。

さらに上流から、
企業のブランディングに寄与したい

これまで名和が在籍していた制作会社では、一人で黙々と作っていくスタイルが多かった。それで生まれるクリエイティブも面白かったが、どうしても仕事は属人的になっていく。抱えるタスクの量から、じっくり考え抜きたい案件に腰を落ち着けて向き合うことも、難しかった。
「いまは、チーム全体で課題解決に取り組んでいる実感があります。どの立場からでもなんでも意見が言える環境は、いいものをつくるための心強い土台でもある。それに、悩んでいるときにはみんな優しいですね。僕がデザインを突き詰めるために時間が足りなくなったときは、周りがバッファをつくってくれました。タイムアップで仕事を適当に終わらせず、やりこむべきところはやりこめるのがいい」。
カシワバラグループの案件を経て、名和はこれまでよりいっそう、ブランディングに興味を持った。「今度はCI/VIやスローガンのように、根本的なブランドのアイデンティティを定義するところから挑戦したいと思っています。いまは、アナログよりデジタルのコミュニケーションが圧倒的に多い時代。だったらもっとデジタル方面の視点をもって、ブランド・ガバナンスをとらえ直してみるべきかもしれません。デザイン&テックカンパニーを掲げるフォーデジットだからこそ、やり遂げられる仕事だとも思うんです」。
欲が出てきた。でも、その欲こそが名和の仕事を一段押し上げて、誰にも代われない価値にする。